緑の風にいだかれて
5月31日、いろいろ思うことがあって、谷川岳に一人旅をすることとなった。
正直、こんな遠くまで来て、山歩きというのは始めてで、
しかも、町の地図でも迷う私が、なんの目印もない山道(といってもそんな険しくなく、わりとなだらかな所)を歩くというのは、かなりの冒険だった。
天気は曇りだが、黒い雨雲に覆われ、かなり風がつよかった。
とりあえず、かっぱは持っていたので、様子を見ながら歩き出した。
歩き始めてしばらくすると、案の定、雨が降って来た。
どしゃ降りというより、霧雨の少し大粒ぐらいだが、風がごーごーと音をたてて吹き、木々がうれしそうに激しくからだを揺すっていた。
実は私、雨の中の山が結構好きで、そういう意味では、絶好の山歩き日和だった。
雨はたちまち辺りを潤し、もう、緑と土の匂いが充満してくる。
そして私の肌から全身にその生命力を注いでくれ、私も人間であることを忘れ、山と同化する。
霧などがたちこめると、たちまち飲み込まれ、目を閉じると、木々の、草花の、大地の、生き物達の喜びの声に満たされる。
風の音も激しく、自分が山の中というより、濁流の川底にいるような錯覚をおこす。
ここは鉄砲水もよくあるそうで、その名残か川っぷちに大きな木が根っこごとごろごろ倒れている。
それでも、木々はうれしいんだろうと感じる。
伐採されるのではなく、自然の驚異の中で倒れるのは、当たり前のことと自然に思えてくる。
途中、昆虫に出会うと、一緒に生きている仲間と思え、とても幸せな気分にしてくれる。
向かい風が来たとき、できるだけ足を踏ん張って一身に耐えて来たけど、
吹き飛ばされそうな時は、目も耳も塞いで、小さく丸まってやりすごそう。いつか緑のさわやかな風に変わるから。
その時は思いっきり身体を延ばして、深く、深く深呼吸をして、歩き出そう。
帰りの電車の中で、私は徐々に人間に戻っていきました。
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